鹿児島は南の米どころ
鹿児島の大地は、桜島の古代の大噴火による火砕流噴出物と火山灰が堆積した、白っぽい土壌『シラス』によって多くを形成しています。シラスは粒があらくて水はけが良すぎるために稲作には向かず、かつてはサツマイモや茶などの農作物しか栽培が難しい土地でした。
しかし、1955年以降、灌漑用水の設備によって水の確保に努めたことからさまざまな農作物の栽培が可能になり、温暖で日照時間や雨に恵まれた鹿児島でも稲作が盛んにおこなわれるようになりました。
夏から秋に訪れる台風を避けるために、暖かい気候を活かして7月中旬頃から収穫する「早期水稲」と、10月上旬から収穫する「普通期水稲」があり、11万5千トン程度のお米が生産されています。
鹿児島県霧島市のお米
霊峰、霧島山の山裾から広がる鹿児島県霧島市。
数々の神話が今も息づいている霧島市は、霧島山麓から湧き出る豊富でミネラル豊かな水と土壌に恵まれ、数多くの作物が栽培されています。
霧島山系を源流とし、錦江湾まで注ぐ天降川(あもりがわ)周辺では特に稲作が盛んで、鹿児島を代表する銘柄「ヒノヒカリ」や鹿児島独自の銘柄「はなさつま」など数多くの品種が栽培されています。
農家の方々が丁寧に育てた昔ながらのお米、昔ながらの味をぜひご賞味ください。
豊作の守り神「田ノ神さあ(たのかんさあ)」
鹿児島県で田んぼの周辺を歩いていると、不思議な石像に出会います。
これこそが鹿児島の田んぼを守る神様「田ノ神さあ(たのかんさあ)」です。
田ノ神さあには様々な形がありますが、頭にコシキス(米をむすとき使うワラでできた簀)をかぶり、手にはメシゲ(しゃもじ)を持った農民型が最もよく見られます。
どことなくユーモラスな格好をした石像ですが、雨や台風の多い鹿児島では水害で農作物が被害を受けることが多く、農民たちが順調な稲の生育と豊かな実りを祈願してひとつひとつが手作りした神様なのです。
豊作だけではなく、縁結びや子供の健康・子宝祈願などさまざまな人々の祈りを受け入れてくれる万能ぶりで、昔から多くの人々の心の拠り所として存在していました。
長い年月で、苔むしたり形が崩れたりしながらも鹿児島の田んぼをずっと見守り続けてきた田ノ神さあ。
これからもずっと私達の暮らしを見つめていてくれるのでしょう。